
装テン(装飾テント)の鑑賞
装飾テントとは、日除け・雨除け・看板の役割を兼ねた店舗用テントのこと。日本全国ほとんどの地域で見ることができる、スタンダードな景観要素だ。もちろん岡山にもたくさんある。装飾テントは多くの場合、地元のテント業者がつくっている。また、個人商店に付設されていることが多い。だから装飾テントは、人々が街に掲げている「地元の作品」だと言える。
装飾テントは、一部の愛好家からは「装テン」という略称で親しまれている。装テンの形状は多様で、まったく同じものは二つとない。傾斜の角度、幅、奥行きなどをじっくり観察すれば、一つひとつにオンリーワンの個性が宿っていることが分かるだろう。
装テンの構造材である鉄骨を「骨」と言う。骨はテントの形状を決定しているだけでなく、それじたいがデザイン要素の一部になっている。骨が見えている装テンも、骨が隠れている装テンも、どちらも偶然そうなっているのではない。テント職人が意図的に選択しているのだ。
また、タレ(垂れ)の有無も鑑賞ポイントだ。テント下部に垂れ下がっているヒラヒラ部分をタレと呼ぶ。波形にカッティング加工されているものが多いが、中にはテント生地がそのまま延長しているだけの無加工タイプのタレもある。まずは「タレつき」か「タレなし」かを判断し、タレがついている場合は、形、長さ、色に注目して鑑賞してみよう。
ぜひ街を歩きながら装飾テントに目を向けてみてほしい。テント職人さんたちの飽くなき工夫の数々が、街にあふれていることに気づくはずだ。岡山の装テンは、岡山でしか見ることができない。
(text&photo 内海)
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